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「リスク」って何? - ヒトはリスクをどう感じるのか
刈間理介(東京大学環境安全研究センター 准教授)
今日、「リスク」と言う言葉は、投資などに伴う経済的なリスクから、遺伝子組換え食品や原子力発電所事故など科学技術の進歩に関わるリスクや、環境化学物質の健康への影響など環境に関わるリスク等、極めて広い領域にわたり用いられている。安全工学的な定義では「リスク」の大きさは、「ハザード発生の頻度」と「ハザードが発生したときの被害の程度」の積によって表されるとされているが、心理学・社会心理学における研究では 人々のリスクの大きさについての感じ方には人と状況により大きな差があることが明らかにされている。本講演では、近年のリスク認知に関する大脳生理学における研究にも触れつつ、人々はどのような状況でリスクをより大きく(またはより小さく)感じるのか、さらには「適切なリスク認知」のためには何が求められているのかについて、これまでの知見を紹介したい。
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見果てぬ夢、室温超伝導
廣井善二(東京大学物性研究所 教授)
超伝導は物質が示す最も劇的な相転移現象の一つです。水が零度で凍る、つ まり、液体から固体へと変化するように、超伝導物質を冷やすとある温度以下で突然、電気抵抗がゼロになります。この時、超伝導体中を流れる電流は「永久電流」と呼ばれ、一度流れ始めると宇宙が消滅しない限り流れ続けます。この不思議な現象の起源を理解することは物理学の大きなテーマであり、ある程度は分かっていますが、未だに多くの謎が残されています。 |
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我国に多いヒト白血病ウイルス感染と白血病
渡邉俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
白血病の中にはウイルスが原因で発症するものがあります。それは我が国に多い「成人T細胞白血病(ATL)」です。この白血病を起こすウイルスはHTLV-1と言う名前で、我が国では約120万人もの人がウイルスに感染していて、毎年1000人以上がこの白血病で亡くなっています。このウイルスをもった人の約5%が一生のうちにこの白血病を発症します。ATLは、一旦発症すると有効な治療法が無く、大部分の方は1年以内に命を落としています。HTLV-1はレトロウイルスと言う病原性ウイルスの一種です。レトロウイルスは動物のがんウイルスとして知られていましたが、HTLV-1は人に感染して白血病を起こす事が示された最初のレトロウイルスです。日本では日沼博士のグループ、米国ではGallo博士のグループがそれぞれほぼ同時にこのウイルスを発見して報告しました。2008年度のノーベル医学生理学賞の対象となったエイズの原因ウイルス「ひと免疫不全ウイルス(HIV)」は、HTLV-1と同じグループに属するウイルスです。しかし、HTLV-1はHIVの3年前に発見されていて、その実験技術がHIV発見につながりました。HTLV-1は主に母親の母乳を介して子供に感染し、50年以上たってから白血病を引き起こします。本講演では、ATLとはどのような病気であるのか、なぜ治療が難しいのか、なぜこのウイルスが日本に多いのか、ウイルスの感染を防ぐにはどうしたら良いか等について説明する予定です。 |
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ビデオ講演「JAXA 野口聡一宇宙飛行士からのビデオレター」
野口聡一(JAXA)
東京大学柏キャンパス一般公開に来場される皆様に向けて,JAXA野口聡一宇宙飛行士からビデオレターが届きました.野口宇宙飛行士は2005年にSTS-114ミッションに参加し,船外活動をはじめ数多くの任務を成功させました.次のミッションである国際宇宙ステーションでの長期滞在においては,柏キャンパスの新領域創成科学研究科10周年記念の旗を持って行くことになっており,その記念としてメッセージをお寄せいただきました.さらに,野口宇宙飛行士のSTS-114ミッションの様子や,先日無事帰還された若田宇宙飛行士の「おもしろ実験」の映像なども併せて放映いたします. |