東京大学柏キャンパス一般公開2016〜発見・体験!柏の知 10月21日〜22日

特別講演会

平成28年10月22日(土)13:00-15:00  場 所:新領域環境棟1階 FSホール(定員:180名 先着順

13:00-13:40

伊福部 達

高齢社会を豊かにする人間サポート技術

伊福部 達 (いふくべ とおる)
東京大学 高齢社会総合研究機構 客員研究員 東京大学・名誉教授

 

超高齢社会に向けて、急速に「労働者人口」が減り「社会保障費」が増えており、それが及ぼす経済への影響が問題になっています。それに加えて人類が経験したことが無いような長い老後の生活で「生きがい」をどこに求めるかも問題になっています。現在、産学官が一体となって、元気な老人には「社会への参加」を促し、虚弱な老人には「自立した生活」を支えることにより、マイナス面をプラスに転換させる道を模索しています。講演では、演者がJST(日本科学技術振興機構)の代表として取り組んでいるプロジェクト「高齢社会を豊かにする科学・技術・システムの創成」を基に、わが国の経済効果と個人の生きがいを両立させることを目的とした「人間サポート技術」の一端について紹介します。

講演は3部構成になっています。第1部では、人間の感覚や手足が弱ったり失われたりしたときに生れてくる「潜在機能」と、それを生かしたサポート技術について話します。第2部では、ゴジラ音楽から緊急地震警報チャイムを開発した経緯の裏話をします。第3部では、高齢者が獲得した知識・経験・技能を若い世代に伝え、老後の「生きがい」を支えるサポート技術について述べます。とくに、ポケモンGOで知られるようになった「バーチャルリアリティ」、最近話題となっている「ロボット達」や「自動運転車」などを高齢社会にどのように活かそうとしているかを話します。講演を聞いて、この分野に少しでも興味を持ってくれる人が増えてくれれば幸いです。

 

13:40-14:20

増田 昌敬

新しい資源開発への挑戦:メタンハイドレート

増田 昌敬 (ますだ よしひろ)
東京大学 人工物工学研究センター・教授

 

水を冷やしていくと氷ができるのと同じ原理で,高い圧力で水とメタンガスの混合物を冷やしていくと,水分子の作る籠状構造にメタン分子が取り込まれたメタンハイドレート(MH)と呼ばれる固体結晶ができます。見かけは氷と似ていますが,1㎥のMHにはメタンガスが大気圧換算で約164㎥(1カ月に通常の家庭が使う量の2~4倍のガス量)が含まれています。このようなMHが世界の大陸縁辺部や日本周辺海域の地層中に膨大な量存在していることがわかってきて,新しい資源として注目されています。

特に,日本周辺海域に眠るMHは貴重な国産資源であって,その商業的開発に向けた研究開発プロジェクトが経済産業省の下で進められています。2013年3月に渥美半島~志摩半島沖で実施された第1回海洋産出試験では,海底地層中のMHから減圧法という生産手法を適用して,日量約20,000㎥で6日間のガス生産に成功しました。来年に予定されている海洋産出試験では,より長期の生産実験が行われます。

本講演では,この新しい資源の商業的開発に向けての技術者・研究者の挑戦,大学で行っている研究を紹介しながら,解のない問題に対するエンジニアリングデザインの考え方をお話しします。また,千葉県では,MHが存在している地層と同じような性質を持つ地層から水溶性天然ガスを生産しており,私たちの身近なところにある資源を地域社会として利用するアイディアを紹介します。

14:20-15:00

福井 類

「人のカタチをしていない(けど役に立つ)ロボット」

福井 類 (ふくい るい)
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系・准教授

 

ロボットと言われて思いつくものは?と質問をすると,ほとんどの方は人の形をしていて歩くロボット(たとえば鉄腕アトム,ガンダム,ASIMOなど)を回答されます。もちろん人の形をした機械がまるで人間のように動くのはとても興味深く,ワクワクさえします。しかし,本当に役に立つロボットは人の形をしている必要があるのでしょうか?人の形をしている以上,基本的には人が受ける制約と同じ制約を受けることになります。極端な例かもしれませんが,人が空を飛ぶのはとても大変ですよね?つまり人の形をしていないからこそできることも沢山あるはずです。
 本講演では,日常ではなかなか脚光を浴びない,"人の形をしていないロボット"を紹介します。具体的には人以外の動植物を模したロボットや,もともとは単なる機械であったものが知能化されてロボットと呼ぶべき状態になったものなどを紹介します。

最後に福井がこれまで取り組んできた分散統合型ロボットの数例紹介して,東京大学のロボット研究が多様であることをご理解頂きたいと思います。

本講演を聴いて頂いた後には,家や会社の中にある沢山の機械がロボットに見えるはずです。そして,身の回りのいろいろなものが”ロボット”になる未来を思い浮かべることもできるようになるかもしれません。


特別講演会の会場案内図
特別講演会の会場