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東大柏キャンパス一般公開2014

特別講演会10月25日(土)

  • 日時:10月25日(土)13:00 ~ 15:00
  • 会場:新領域環境棟1階FSホール
  • 定員:当日先着180名(満員の場合は入場をお断りする場合がありますのでご了承ください。)

   特別講演会プログラム

13:00 ~ 13:40

 

塩澤先生

ニュートリノで探る素粒子の世界と宇宙

東京大学宇宙線研究所・准教授 塩澤 眞人 (しおざわ まさと)

 

 ニュートリノは素粒子の仲間の中でもとらえるのが難しく、いまだ謎の多い素粒子です。しかしこの宇宙はビッグバンの残骸の無数のニュートリノで満たされており、ニュートリノの性質は宇宙の成り立ちを理解する鍵となると考えられています。

この20年間、日本の実験が中心となり、ニュートリノの重さや3種類のニュートリノ間での関係が次々と明らかになってきました。わかった性質は現在の素粒子の理論で自然に説明することはできず、素粒子の統一理論の存在の可能性を示していると考えられています。また将来、ニュートリノとその反粒子である反ニュートリノの性質の違いを実験で調べることにより、なぜビッグバンで作られた反粒子が現在の宇宙には存在せず、粒子だけが現在残っているかという謎にせまる事ができると期待されています。

本講演では謎に満ちたニュートリノの紹介と、巨大ニュートリノ実験スーパーカミオカンデでのニュートリノをとらえる方法、ニュートリノ研究やその成果、そして将来のニュートリノ研究の見通しを紹介したいと思います。

13:40 ~ 14:20

 

山室先生

物質の第4の状態“ガラス”~その謎に迫る

東京大学物性研究所・教授 山室 修 (やまむろ おさむ)

 

皆さんの多くは、一般に物質には結晶、液体、気体の3状態があることをご存じかと思います。たぶん液 晶という結晶と液体の中間状態もご存じでしょう。この講演では、そのどれでもない“ガラス”という状態 についてお話しします。もちろん窓や食器で使われているものもガラスですが、ここで扱うガラスはもっと 広義のガラスです。液体を冷却すると、融点では結晶化せず冷え続ける(過冷却する)ことがありますが、 ガラスはこの過冷却液体のさらに低温で現れます。過冷却さえすればどのような液体もガラスになるので、 ガラスは物質の“第4の状態”とも呼ばれています。過冷却液体がガラスになるときには、大きな構造変化 を起こすわけでもなく、ただ急激に流動性が無くなります。この現象を“ガラス転移”と呼びますが、この 機構はまだ解明されておらず、古くからの物性物理学の大問題として残っているのです。

ガラス転移は身近な現象でもあります。高温で柔らかい状態が低温で硬くなる現象(その逆も)のほとんどはガラス転移です。例えば、髪の毛をドライヤーでセットすることや、チューインガムが口の中で柔らかくなることもガラス転移に関係しています。高分子やプラスチックと呼ばれるほとんどの物質がガラス転移を示すのです。

私たちは、できる限り単純な物質のガラスを作ることが、ガラス転移の謎を解く一番の近道と考え、低温蒸着法という方法を開発し、単純な分子性物質のガラスの熱容量や中性子散乱を測定しています。講演では、このような私たちの研究について、動画やイラストを交えて、できるだけ平易に解説します。

14:20 ~ 15:00

 

土原先生

がんゲノム情報を活用した新しい治療法の開発

東京大学大学院新領域創成科学研究科客員教授(国立がん研究センター・トランスレーショナルリサーチ分野長) 土原 一哉 (つちはら かつや)

 

がんは体の中の細胞が少しずつ変化してできた異常な細胞のかたまりです。がん細胞の多くは遺伝子にできる異常が原因で発生します。遺伝子異常にはおもに細胞を増殖させるアクセルが強くなるもの(がん遺伝子の活性化)とブレーキがきかなくなるもの(がん抑制遺伝子の不活化)があります。いくつの遺伝子に異常が重なるとがんができるのでしょうか? DNAが約30億個つながっているヒトのゲノム(遺伝情報の全体)には2万個以上の遺伝子があります。そのすべてについて異常がないかを調べられる次世代DNAシーケンサーが開発されました。私たちは肺がんや大腸がんのサンプルを解析を行い、いろいろな組み合わせで1例あたり平均して百個以上の遺伝子に変異があることを明らかにしました。

最近、活性化したがん遺伝子が作る酵素のはたらきを阻害する薬「分子標的薬」が有望ながん治療薬として実用化されています。肺がんで見つかる異常なEGFRやALKを標的とした治療は日本でも一般的に使用できるようになりました。これからはがんの特性にあわせた治療法を選ぶ必要があります。そのためにはひとりひとりの患者さんのがんでおきている遺伝子異常をできるだけ速く正確に診断する必要があります。

私たちは患者さんの生検(バイオプシー)サンプルから遺伝子変異をみつけだす臨床研究などを通じ、がん遺伝子検査の安全性と有効性を検証しています。



東京大学柏キャンパス共同学術経営委員会
問合せ先:東京大学柏地区共通事務センター総務・広報係(電子メール:kashiwa-info at kashiwa.u-tokyo.ac.jp