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柏キャンパス一般公開2012

特別講演会

日時:10月27日(土) 13:00 〜 15:50

会場:柏図書館メディアホール→ 新領域環境棟1階FSホールに 変更になりました。

定員:当日先着120名(柏図書館メディアホール)
    満員の場合は入場をお断りする場合がありますのでご了承ください。

会場が変更になりました。ご注意ください

遠隔講義システムによりカブリ数物連携宇宙研究機構1階大講義室に中継します

13:00 ~ 13:40

 

出口先生

柏の葉発「公・民・学」連携のアーバンデザインセンターUDCKの取り組みと環境未来都市

東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 出口 敦 (でぐち あつし)

 

本学柏キャンパスや柏の葉キャンパス駅を含む一帯は、新規開発地として現在も都市開発が進行中です。中でも、柏の葉キャンパス駅を中心とする約273ヘクタールの区域では、区画整理事業による道路、公園等のインフラ整備が進められ、将来計画人口2万6千人の地区が形成される予定です。駅前には既に大型商業施設や高層マンションが建ち、ホテルやオフィスなどの建設も進んでいますが、将来はどのような街になっていくのでしょうか。あるいはどのような街にしていくべきなのでしょうか。

また、東日本大震災などを経験し、日本のまちづくりの方向性も大きく変わろうとしています。そのような中、柏の葉では2006年に東大、千葉大、柏市、民間企業、地元団体などが協力し、全国初の「公・民・学」連携のまちづくりの拠点として「アーバンデザインセンター柏の葉(UDCK)」が設立され、様々な先進的な社会実験や地域参加型のまちづくり活動が展開されています

2011年度には柏市、東大、千葉大、UDCKなどが共同で申請した提案が国の「環境未来都市」の採択を受け、国の支援を受けながら高齢社会やエネルギー問題などの解題解決モデルとなるべく、新たな構想の下での取り組みも進んでいます。

私の専門分野である都市設計学は、様々な要素で構成される「都市」を計画・設計する方法や理論を研究しますが、今回は、柏の葉での取り組みや構想をご紹介し、新しい時代に求められる技術や方法を地域に活かしていく方法を考えてみたいと思います。

13:40 ~ 14:20

 

西野先生

人工物と社会の構造を実験室で見る

東京大学人工物工学研究センター准教授(兼務)/東京大学大学院工学系研究科 准教授 西野 成昭 (にしの なりあき)

 

「人工物工学」とは何か。人工物の設計に関する研究分野である。一般には聞き慣れない言葉であるが、何をやっているかを端的に表現するのは実に難しい。現在では、それほど社会と人工物の関わりは複雑である。

従来、製品を設計する場合には、要求された仕様に対して、それを満たす機能を実現する構造を作り出すが、そのような従来型の方法では社会との予期せぬ相互作用については取り扱うことが難しい。例えば、自動車という人工物は、我々に快適で迅速な移動手段を提供し、生活を豊かにしてくれる。ところが、一方で環境汚染や温室効果ガスなどの問題を引き起こす。本来、人々を豊かにするために生み出された人工物が、時として我々の生活に負の影響を与える。人工物と人と社会との相互作用を陽に考慮した設計理論を追究する分野が人工物工学である。

このような対象を研究するセンターとして、人工物工学研究センターは1992年に設立され、これまでにユニークな研究が数多く行われている。本講演では、人工物工学を概説するとともに、そこで行っている研究事例を紹介する。具体的には、仮想社会を実験室に構築し、実際の人間を被験者として、そこで経済的な取引などを行わせる方法を用いた研究で、そこでは、実験室でどのような社会が形成させるかを観察し、また、どうすれば望ましい構造を創出できるのかに着眼して研究が進められている。その一例として、電気自動車の技術開発と普及の問題について報告する。

14:30 ~ 15:10

 

石川先生

スパコンって何?

東京大学情報基盤センターセンター長・教授 石川 裕 (いしかわ ゆたか)

 

「2位じゃダメなんでしょうか?」で話題になった次世代スーパーコンピュータ「京」が、昨年、世界第1位を獲得しました。今年、2位に転落という記事も出ましたが、平和利用のスパコンとしては依然世界1位です。今年4月、柏キャンパス第2総合研究棟情報基盤センターには、京コンピュータの商用版である富士通製FX10が設置され運用を開始しています。

物理学、化学、生物学、地学、医学、工学といった学問領域では、対象分野の現象を理論的に説明し現象を予測、実験や観測事実によってその理論の正しさを検証するという手法が取られてきました。スーパーコンピュータ(スパコン)は、実験に変わる検証法として、予測のための道具として、注目されています。スパコンを用いた学問では、現象を数理モデル(数学によって記述された現象モデル)化し、スパコンが持つ計算能力を用いて解きます。スパコンを用いた学問は、理論科学、実験科学に次ぐ、第3の科学とも呼ばれています。

本講演では、「市販されているPCを沢山集めてくればスパコンは必要ないのでは」、「なぜ、世界1位のスパコンが必要なのか」、と言った疑問に対し、スパコンの仕組みを、また、スパコンが拓く科学・工学の世界として情報基盤センター利用者の取り組みを紹介することによってこれら疑問に応えます。

15:10 ~ 15:50

 

村山先生

宇宙にぎゅっと詰まった謎の粒子:ヒッグス

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構長・特任教授 村山 斉 (むらやま ひとし)

 

今年7月4日に発表になり、日本の新聞でも各社一面トップで取り上げた「ヒッグス粒子と見られる」新粒子の発見。1964年に予言され、1984年から実験の構想を練り、2001年から装置を作り始め、多くの日本人も含め世界中から1万人以上の人たちの努力で実現した「世紀の大発見」です。ここまで多くの人々と労力をかき立てたものは何だったのか。そもそも「ヒッグス粒子」とは何か。この発見で何がわかったのか。特に中高生を対象にお話します。

ヒッグス粒子はそもそも、物質でも力でもない、全く新しい種類の「秩序を作る」粒子です。宇宙にはヒッグス粒子がぎゅっと凍り付いたように詰まっていて、角砂糖の中にざっと一兆の一兆倍の一兆倍の一兆倍ある勘定になります。このヒッグス粒子が宇宙から蒸発すると、私達の体は10億分の一秒でバラバラになってしまいます。ヒッグス粒子は宇宙に凍り付いたことで、原子を作る電子が光速で飛ばずに、ゆっくり運動できるようにし、宇宙に「秩序」を作り、原子ができ、人間や星が出来るようにしたのです。ヒッグス粒子がなくては、私達は生まれなかったのです。

しかし、このような誰も見たことのない様な全く新しい種類の粒子が見つかると、仲間がいるのではないかと考えたくなります。仲間は異次元から来るのか、超対称性粒子なのか、説はいろいろありますが、まだ全くわかっていません。この謎を解くための今後の計画についてもお話します。



東京大学柏キャンパス共同学術経営委員会
問合せ先:東京大学柏地区共通事務センター総務・広報係(電子メール:kashiwa-info at kashiwa.u-tokyo.ac.jp